杉工場

木の美しさを感じられるチェアであること。ダイニングチェアと並んでいても違和感なく、一つの風景になれること。大人になっても使えること。テーブルをデスクの代わりに使う光景が日常のものとなった今、そんな昇降するチェアが必要だと考えました。

すらりと伸びた脚とゆったりと背中を支える背板、なめらかな曲面を描く座板に、つい触りたくなる小ぶりなアーム。昇降椅子は一見、こどもの椅子に見えないかもしれませんが、こどもの成長とともに昇降が調整できるよう、座面の高さは3段階に設定が可能です。いつでも美しい姿勢をキープすることができます。優しさを意識し、全体的に面取り（角を丸くする加工）しながらも、過度にならぬよう、ほどよいバランスを模索しています。

開発にあたり大事にしたのは、昇降する機能がデザインの邪魔をせず、むしろ機能がデザインとなることです。例えば、アーム。座る時や立ち上がる時、姿勢やデスクとの距離を整える際にも必要なアームは、昇降チェア特有の「座面を脚で挟む」という構造の一部として生まれています。さらに椅子の強度を高める貫（脚つなぎ）は、足が地面に届かないお子さんに必要なフットレスト（足置き）となっています。座板は軽やかな印象を生み出すために、表裏を大胆に削り職人達が一つひとつ手仕上げで研磨。重量を抑えながら使い心地を追求した結果、天然木アルダー材の美しさが感じられる造形となりました。

共に家族の時間を重ねるからこそ愛着が生まれ、愛着があるからこそ長く使いたいと願う。昇降椅子が目指したのは、そんな家族の一員となれる一脚です。